リワークとは?費用からプログラムの内容・利用するメリットまで徹底解説!
仕事による負担や人間関係によるストレスが強いと、心身ともに不調をきたしたり、休職せざるを得ない状況となることがあります。
メンタルヘルスの不調による休職期間は、3~4か月が平均と言われており、復職へ不安を抱える方も多いのではないでしょうか。
そんな方をサポートするためにリワークという支援制度があります。
リワークとはどのようなものか、プログラム内容や効果、メリット・デメリットや受けられる場所について解説していきます。
リワークとは
リワークとは、「return to work」の略で、メンタルヘルスの不調を原因として休職することになった労働者に対して行われる支援プログラムです。
復職支援プログラムや職場復帰プログラムとも言われています。
うつ病や適応障害などにより、休職や退職をする方が年々増加してきている背景から、日本では1997年より支援が始まりました。
復職をする時には、症状の改善だけでなく、社会的機能の回復が必要です。
しかし、休養や薬物療法では社会的機能の回復は難しいことがあります。
そのため、職場復帰を目標とした、リハビリテーションプログラムを、医師や看護師、作業療法士、精神保健福祉士などの専門家がチームとなり支援していく制度です。
リワークとはどのようなものか、種類や対象者、利用期間や費用についてご紹介します。
リワークとは
リワークとは、復職に向けた職業リハビリテーションを行い、不安や悩みを解決することで、再度休職となることを防ぐ支援です。
プログラムに合わせて決まった時間に施設へ通うことで、通勤を想定した生活リズムへ整えたり、仕事に近い内容のオフィスワークや軽作業を行うことで、復職へ向けて体を慣らしていきます。
疾病教育や認知行動療法などの心理療法により、復職後の病気の再発を防ぐことも期待できます。
リワークで行うプログラムの目的は、病状の回復・安定をさせること、復職の準備をすること、再発防止のためのセルフケア能力を向上させることです。
リワークの種類
リワークで行うプログラムには、個人に対して実施されるものや、集団で行われるもの、講義形式で行われるものなどがあります。
また、施設によっても提供しているプログラムの内容は異なります。
リワークプログラムは、以下の3つの種類に分けられます。
- 医療機関(主に精神科や心療内科)で行われる医療リワーク
- 地域障害者職業センターで行われる職リハリワーク
- 企業や従業員支援プログラムで行われる職場リワーク
リワークの対象者
リワークの対象者は、メンタルヘルスの不調により仕事を休職した方です。
うつ病や統合失調症、適応障害、双極性障害などと診断された方が対象者になります。
疾病の違いによってリワークの対象者から外れるといったことは、基本的にはありません。
医師の意見書や診断書があれば、利用することができます。
リワークを検討するタイミングは、病状が軽快に向かい、職場復帰を考え始めた頃に検討する方が多いようです。
職場復帰の条件にリワーク施設の利用を義務づけている企業もあるため、復職の条件について職場と話し合っておくと安心です。
リワークの利用期間・費用
リワークの利用期間は、一般的に3か月~6か月程度になります。
休職期間がどのくらい認められているかにより期間は異なります。
また、施設によっても違いがあり、短いところでは数週間、長いところでは、数年にわたり支援を受けられるところもあります。
リワークの利用開始までには、数週間程度かかることもあるので、施設に問い合わせをし、余裕を持って申し込みをしておくとよいでしょう。
リワークの期間の目途が立つことで、職場復帰への計画が立てやすくなります。
費用は、運営している施設により異なります。
医療機関:300~3000円以上/日(自立支援医療受給者証を所持している場合は減額)
障害者職業センター:無料(公務員は利用不可)
就労移行支援:800~1200円程度/日(前年度の収入により変動)
医療機関や就労移行支援は前年度の所得により月の上限金額が異なります。
リワークを受ける際には、料金の自己負担がどのくらいになるのかも含めて、確認をしておきましょう。
リワークの主なプログラム内容
リワークはそれぞれの目的に応じたプログラム内容があります。
個人やグループで行うものから、仕事を想定して行うもの、コミュニケーション能力を向上させるものなどさまざまです。
リワークの主なプログラム内容は、具体的にどのようなものか解説していきます。
オフィスワーク
オフィスワーク(作業課題)は、個人やグループで、パソコンを使って資料作成やプレゼンテーションを行うといった、実際の仕事を想定したトレーニングです。
初めは読書やぬり絵など、体調に合わせた軽作業から始めていくこともあります。
職場に近い環境でトレーニングを行うことで、復職後の作業がイメージしやすくなったり、集中力や注意能力の回復が期待できます。
また、企業研修と同じようなテーマを元に、1つの課題をクリアしたり、共通認識を持てているか確認を得るような共同作業も行われています。
キャリアデザイン
キャリアデザインでは、これまでのキャリアを見直すことにより、今後も活用できそうな強味を見つけ、今後のキャリアを考えていくプログラム内容です。
今後どのようなキャリアを築いていきたいのかを考えることで、価値観を明確にし、キャリア設計を行います。
プログラムは基本的に、対象者とスタッフが1対1で行います。
また、これまでのキャリアを見直すことで、自分の長所や短所、自分に向いている仕事がどのようなものかを確認するきっかけになります。
体力向上トレーニング
体力向上トレーニングは、スポーツを通して日々の睡眠や食事、運動の振り返りを行うプログラム内容です。
取り入れられているスポーツは、ウォーキングやバドミントン、卓球などさまざまです。
対象者は、生活リズムが崩れてしまった方や、体力に自信がない方などです。
日常生活や仕事をするために必要な体力を維持し、疲労感が出ない程度のトレーニングを行います。
基礎体力は1人1人異なるため、自分自身に合ったペースでトレーニングを行い、体力向上を目指します。
認知行動療法
認知行動療法とは、自分が抱える悩みを具体的に分析することで、見え方や考え方、行動などの解決方法の習得を目指す心理療法です。
自分がどのような場面でストレスや負担を感じやすいかを理解し、どのようにしたら解決できるのか、そもそもストレスを溜めないためにはどのようにしたらよいか対処法を考えます。
それにより、今後同様の場面に遭遇した場合に、自分自身でストレスを回避する方法を身に付けていきます。
復職後のストレス軽減を目指すといった目的もあります。
医師に認知行動療法が必要と判断された方が対象者となります。
グループワーク
グループワークは、休職者同士がテーマをもって話し合いをするプログラム内容です。
グループでお互いの考えを尊重しながら、ロールプレイングを行うことで、コミュニケーションにおける問題解決能力を身に付けることができます。
復職に関する悩みや不安など、同じ境遇の方と話し合うことで、悩んでいるのは自分だけではないという自己肯定感を生み出します。
また、同じ境遇の方から悩みを聞くことで、自分とは異なった視点での考え方や自己理解を深められるため、復職後の再発防止につなげることができます。
レクリエーション
レクリエーションはスポーツやゲームなどを通して、集団行動によるコミュニケーション能力の向上を行うプログラム内容です。
レクリエーションは単なる遊びや交流だけでなく、体を動かすことで、体力回復やストレス解消ができるといった目的もあります。
また、レクリエーションを通した人との関わりにより、仲間意識やチームワークなどが芽生え、人との打ち解けやすさにつながります。
リワークを利用するメリット・デメリット
リワークは復職を目指すために行いますが、メリットやデメリットもあります。
休職していた方は、体力の低下やコミュニケーションスキルの低下など復職に不安を抱くこともあるでしょう。
スムーズな復職と、再休職の防止を目指すためにリワークを利用する一方で、期間や費用がかかってしまうことがリワークを利用する妨げとなることもあります。
メリット・デメリットを理解したうえで、自分にとってリワークが必要かどうかを検討しましょう。
メリット
リワークを行うメリットは、スムーズに復職しやすいこと、客観的なアドバイスがもらえること、同じ境遇の方と交流できることです。
復職に向けて適切なリハビリテーションを受けることは、再休職を防ぐという意味でも大切なことです。
リワークに通うことで生活リズムが整ったり、仕事復帰への準備ができたりするため、復職後もスムーズに職場に適応しやすいと言われています。
また、病状やリワークでの取り組み、再発防止対策などを踏まえた上で専門家から客観的なアドバイスをもらえるので、自身では気付けないことに気付けることがあるかもしれません。
集団行動を通して同じ境遇の方と交流したり意見交換したりすることは、安心感につながり復職へのモチベーションを高めるといった効果も期待できます。
リワーク施設でのリハビリテーションを通して得られる情報は、企業側にとっても復職を受け入れる際に大切な判断材料となります。
どのくらい働けるのか、前の部署で働くことができるのか、休職した原因は解決できたのか、体調面の不安はないかなど症状に合わせた配慮を考える必要があるからです。
リワーク施設での情報と、医師の診断を踏まえたうえで、復職可能かを判断していくことが、再休職を防ぐことにつながります。
デメリット
リワークに通うデメリットは、数か月通ったり、費用がかかったりする場合があるため、期間や経済面で負担が生じることです。
リワークに通う期間は個人差はありますが、平均して半年ほどです。
また、事業所により、リワークに通うことで費用が発生することがあります。
リワークの費用以外にも交通費や昼食代などは自身の負担となります。
リワークに通っている期間は休職扱いとなるため、収入面で経済的に不安定な状態になりやすいです。
休職中で経済的に不安定な中での出費は、リワークに通うデメリットとなることもあります。
リワークの効果
リワークで行うさまざまなプログラムにより、実際の職場で役に立つ能力や技術を向上させることができます。
そのため、復職後に仕事をスムーズに行い、自分にストレスがない状態での復職を実現させるといった効果があります。
具体的にどのような効果があるかを解説していきます。
生活リズムが整う
休職中は心身を休養させることが第一になるため、仕事をしている時とは異なった生活リズムになります。
まずは時間にとらわれず、ゆったりとした生活を送ることで心身を回復させます。
しかし、休職期間中は運動不足や、睡眠をはじめとする生活リズムの乱れが起こりやすいです。
そこで、オフィスワークや体力向上トレーニングなどのプログラムに参加し、体力をつけたり、睡眠リズムを整えたりしていきます。
決まった日時にリワーク施設へ通うことで、復職に向けて生活リズムを整えることができます。
仕事復帰への準備ができる
休職中に仕事から離れることで、スキルの低下やコミュニケーション能力の低下を感じることがあるかもしれません。
職場に似た環境でオフィスワークプログラムを行うことで、復職後に必要とされるスキルの維持・向上が期待できます。
また、グループワークやレクリエーションプログラムを通して、他者とのコミュニケーション能力を向上させておくことで、人間関係のストレスを軽減させる効果も期待できます。
リワークに参加してスキルやコミュニケーション能力といった社会的機能を向上させ、仕事復帰への準備を行いましょう。
病気の再発や再度の休職を防ぐ
復職後は、基本的に休職前の職場で働くことが多いです。
つまり、休職の原因となったストレスを再度感じる可能性があるため、症状が再発するリスクがあります。
復職後に、同様のストレスを感じることで、再度体調を崩し、休職となるパターンも少なくありません。
そのため、認知行動療法などのプログラムを受けることで、自己分析や自己理解をし、対処方法を身に付けることは、病気の再発や再度の休職を防ぐことにつながります。
リワークを受けられる場所
リワークを受けられる場所は、以下の3つになります。
- 医療機関
- 地域障害者職業センター
- 福祉系リワーク施設
それぞれの施設でリハビリテーション内容に違いがあります。
自分の症状に合ったリワーク施設で、適切なリハビリテーションを受けましょう。
医療機関
医療機関では、医学的なリハビリテーションが受けられます。
主に精神科や心療内科で実施されていることが多いです。
再休職の予防を目標としているため、病状を回復・安定させるといった治療がプログラムに含まれます。
また、ものごとの受け取り方や考え方のクセについて自覚・修正する認知行動療法は、医療機関でしか受けることができません。
他にも、オフィスワークの訓練や生活リズムの改善、病気の理解を深めるための学習プログラムや、グループでの共同作業などを行うプログラムが治療の一つとして行われています。
対象者は、医師に医療機関でのリワークが必要と認められた復職意欲のある休職者になります。
そのため、失業中の方は医療機関でリワークを受けることができません。
ただ、リワークを実施している医療機関は限られているため、通院先や主治医の変更が必要となる場合もあります。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターでは、生活リズムの構築や簡単な作業を通した自身の状態の把握、復職後の安定した勤務に向けてのストレス対処法やコミュニケーションスキルのトレーニングを行います。
地域障害者職業センターは、障害や疾患がある方の就労に関する支援を行う施設のため、就労に関する具体的なアドバイスを受けることができます。
しかし、病気や疾患の回復・治療が目的ではないため、専門医が常駐していない場合もあります。
対象者は、復帰意欲のある休職者と雇用事業主です。
雇用事業主への支援として、職場復帰への労働条件、仕事内容の設定や、休職した方の病気の状態、配慮すべき点の理解の促進や復職後のフォローを実施します。
雇用事業主に対してもアドバイスや支援を行うため、受け入れがされやすくスムーズな復職につながります。
地域障害者職業センターは各都道府県に1か所設置されている公的な施設で、公務員の方は利用することができません。
利用にかかる料金は無料ですが、希望者が多く、利用まで数か月程度の待ちがあることがあります。
福祉系リワーク施設
福祉系リワーク施設では、パソコンの訓練やコミュニケーションの訓練、セルフケアのプログラムなど様々な内容を提供しています。
事業所により特化した分野もあり、運動に特化したプログラムを実施する施設もあります。
リワーク期間を利用して、スキルアップを目指すこともできます。
福祉系リワーク施設は、障害のある方の就職・定着のための訓練を行う通所施設で、就労移行支援事務所などで実施されています。
オフィスビルに事業所が設置されていることも多く、通勤訓練に最適です。
また、復職後は企業で働き続けることを目的とした定着支援を受けることができます。
定着支援は、復職後月に1~2回程度、面談を行い、復職後の不安や悩みについて相談することができます。
不安や悩みに対し、支援者が企業との間に入り調整を行うことで、再休職を防ぐ効果があります。
対象者は、企業、主治医、市区町村の判断によりリワークが必要と判断された方です。
リワークを希望する場合は、受け入れが可能かどうか問い合わせて確認してみましょう。
休職中にリワークに参加し復職を目指そう
リワークは、復職への不安や悩みを解消しスムーズな復職を目指すという重要な役割があります。
また、再度の休職を防ぐという目的もあります。
休職期間が長くなってしまうと、今後の生活や経済的な悩みが生じ、復職を焦ってしまうことがあるかもしれません。
しかし、リワークを受けることで、復職への自信につながったり、自己肯定感を上げ再発を防止したりすることができます。
休職中にリワークに参加し、スムーズな復職を目指していきましょう。