ASDの人向けの仕事や向いている職業環境を調査!職業の探し方や支援機関は?
記事の目次
- 1ASDとは?
- 1.1ASDの特性
- 1.2ASDの方の長所
- 1.3ASDの方の短所
- 2ASDに向いている職業
- 2.1①経理事務
- 2.2②プログラマー
- 2.3③Webライター
- 2.4④ソフトウェアなどのテスター
- 2.5⑤コーダー
- 2.6⑥Webデザイナー
- 2.7⑦軽作業
- 3ASDに向いていない仕事
- 3.1①接客業
- 3.2②営業職
- 3.3③総務職
- 3.4④お客様対応窓口
- 3.5⑤秘書
- 4ASDの就職・転職のコツ
- 4.1医療機関やサポート団体と繋がる
- 4.2特性理解や知識・スキルを獲得する
- 4.3自分に合う就職・転職先探しをする
- 4.4エントリーシートや面接の対策をする
- 5ASDの方が仕事で起こしやすいトラブル
- 5.1業務に対する指示が理解できない
- 5.2対人関係が理解できない
- 5.3マイルールを優先してしまう
- 5.4自分のミスを認めない
- 5.5身だしなみに無頓着
- 5.6会社のルールを理解できない
- 6ASDが就職・転職の際に利用できる支援制度
- 6.1精神障害者保健福祉手帳
- 6.2自立支援医療
- 6.3就労移行支援
- 7ASDの方は自己をよく理解して向いている仕事を見つけよう
ASDとは?
はじめに、ASDとは何かについて解説します。
ASDとは?
- 人とのコミュニケーションが苦手で、物事への強いこだわりが特徴の発達障害の一種です。
- 自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害などを含む意味合いを持つ言葉として認知されています。
ASD(自閉スペクトラム症/自閉スペクトラム障害)の診断名は、2013年より用いられています。
2013年の「DSM-5」刊行以降、自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害の症状区分を取り払い、名称を「ASD」という診断名へ統一しました。
「DSM」とは、精神医学会刊行の診断マニュアルのことであり、「DSM-5」は第5版(2023年時点で最新)を意味します。
精神疾患に関する定義を明確にすることによって、治療を行っている人間が正確な判断ができるようになることを目的として作成されました。
以上の経緯から、現在ではASD(自閉スペクトラム症/自閉スペクトラム障害)という診断名を広く用るようになりました。
ASDの特性
ASDの特性として、次の3つがあげられます。
ASDの特徴
- 社会性の特徴:社会において常識とされている物事や暗黙のルールなどを気にしない
- コミュニケーションの特徴:自分の頭の中に思い浮かぶことを次々に話してしまう
- 想像力やこだわりの特徴 : 決められた手順や自分が一度決めたルールに徹底してこだわる
社会性の特徴の例として、
- 場の空気が読めない
- 相手の様子を察することができない
- 周囲への気遣いができない
- あいさつや礼儀をわきまえない
- 自分の間違えを認めない
本人に自覚がなくても周りからは「非常識」や「自己中心的」といったイメージをもたれてしまうことも珍しくありません。
コミュニケーションの特徴の例として、
- 特定の話題について延々話し続けられる
- 印象に残った出来事を鮮明に話せる
- 独特の言い回しをする
相手が興味のない話題に関しても延々と話し続けてしまうため、会話としては一方的になってしまうことが多いです。
しかしながら、裏を返せば自分が夢中になれることに関しての知識量は計り知れないと言えるでしょう。
想像力やこだわりの特徴の例として、
- 決められたルールや手順を徹底して守る
- 単純作業が得意
- 規則正しく生活できる
あらかじめ決められたことに関しては対応できますが、急な変更などを極端に苦手とし対応が難しくなることも多いです。
ASDの方の長所
ASDの方の長所は、以下にあげる項目に当てはまる場合が多いです。
ASDの長所
- 正しい手順やルールを守る
- 細かな違いやミスに気づく
- 興味関心のあることに没頭する
- 論理的な思考を持っている
- 独創性や発想力を持っている
ASDの方は、一般的にこだわりが強く、見落としがちな細かいミスや間違いにもよく気づきます。
必ずしも当てはまるわけではありませんが、ルールを遵守したり、論理的に考えを組み立てることが得意といわれているため、仕事で活かせる場面は多いでしょう。
ASDの方の短所
一方、ASDの方には、以下のような短所が見られやすいです。
ASDの短所
- 報告、連絡、相談がうまくできない
- 話の内容や暗黙の了解を理解しづらい
- 人の話を聞いていないと誤解されやすい
- 自分の体調や状態を把握しづらい
- 感覚過敏でストレスを感じやすい
対人面のトラブルを招きやすい短所が多いですが、自身の体調やストレスへの自覚が薄い点も見逃せません。
ストレスの原因でもある感覚過敏は普段感じている五感を極端に気にしてしまう状態で、感覚過敏が原因で集中の妨げになったり、かえって原因の方に集中してしまったりすることも多いです。
また、過集中やこだわりの強さから、休憩を挟まず、倒れるまで作業を続ける人もいます。
感覚過敏とは?
- 五感(聴覚・視覚・触覚・嗅覚・味覚)を過剰に感じてしまう症状のことです。
- 感覚過敏の原因としては、脳機能によるものや、日常生活における不安やストレス、身体疾患があるケースなど様々です。
- 感覚としては「料理の匂いが気になりすぎてストレスに感じる(=嗅覚過敏)」「街の雑音が気になりすぎる(=聴覚過敏)」など、人によって様々です。
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ASDに向いている職業
本項目では、ASDに向いている職業について7つ紹介します。
ASDでは聴覚よりも視覚優位の傾向の人が多いため、仕事においては定型作業が中心で淡々と仕事を進めやすい仕事、専門性やこだわり、視覚処理能力を活かせる仕事で能力を活かしやすいでしょう。
職場環境も重要で、以下の環境が向いている可能性が高いです。
視覚優位
- 視覚優位とは、「耳で聞くより目で見た情報の方が処理しやすい」という特性のことです。
- 言葉や音で聞くよりも、絵や写真を見た方が覚えやすい特性をもっており、例えば「森」という単語からは「緑の木々が広がっている情景」を連想するように、物事を映像として記憶します。
- 「一度会った人や場所の場所を鮮明に覚えている」や「口頭での指示よりも図表などを用いた視覚的な指示の方が理解がしやすい」などの傾向がある人は視覚優位の特性を持っている可能性が高いです。
ASDに向いている職場環境
- 来客や人の出入りが少ない職場
- 季節や年間でスケジュールが決まっており、先の予定を立てやすい職場
①経理事務
ASDに向いている職業の1つ目は、経理事務です。
経理事務の仕事は、会社の収支やデータなどを管理するルーティンワークです。
決められたルールに沿って忠実に作業できるASDの特性と合っています。
また、ASDの方はこだわりが強く、集中力が高い特性を持つため、経理以外の事務職でも来客や電話応対がなく、単純作業の仕事であれば向いている可能性は高いでしょう。
②プログラマー
ASDに向いている職業の2つ目は、プログラマーです。
プログラマーはエンジニアが設計した仕様書に基づき、プログラミングを行う仕事です。
プログラム言語を組み立てていき、アプリやシステムツールが動作するように作成します。
一日中パソコンに向かいプログラミングに取り組む必要があるため、集中力の高いASDの特性に向いています。
イレギュラーも発生しにくいので、臨機応変な対応が苦手なASDの方に適しているでしょう。
③Webライター
ASDに向いている職業の3つ目は、Webライターです。
Webライターはリサーチしながら文章を執筆し、記事を完成させる仕事です。
働く時間や作業環境を自分で決められるため、自由な働き方ができます。
ASDの方は話すよりも書いて伝えることに長けていることが多いため、専門知識や興味のある分野で挑戦すれば、活躍できる可能性が高いでしょう。
④ソフトウェアなどのテスター
ASDに向いている職業の4つ目は、ソフトウェアなどのテスターです。
ソフトウェアをはじめとする成果物が問題なく動作するか、テストする仕事です。
想定されるケースを洗い出し、テストを行うことでプログラムやデータベースの設計ミス、プログラム中のバグを発見し、製品の品質を向上させる役割があります。
そのため、開発に興味があるASDの方に向いている職業といえるでしょう。
⑤コーダー
ASDに向いている職業の5つ目は、コーダーです。
コーダーは、Webデザイナーによって作成されたホームページをコーディングし、Web上で閲覧可能にする仕事です。
集中力と正確性が求められる業務となるため、ASDの特性とマッチしています。
⑥Webデザイナー
ASDに向いている職業の6つ目は、Webデザイナーです。
ASDの方には視覚情報の処理が得意という特性があるため、Webデザイナーのようなクリエイティブな仕事も向いている可能性が高いです。
Webデザイナーはフリーランスでも活動できるため、働く時間や作業環境を自分で決定できます。
⑦軽作業
ASDに向いている職業の7つ目は、軽作業です。
軽作業は、荷物の仕分けや梱包、またはデータ入力やピッキング作業などの簡単な仕事です。
同じ作業を繰り返し行う業務のため、集中力や正確性が求められます。
未経験の方でもはじめられ、人とのコミュニケーションが必要最小限のため、集中力が高く正確性を追求するASDの特性に合っています。
ASDに向いていない仕事
本項目では、ASDに向いてない仕事について5つ紹介します。
ASDの方は基本的に、電話対応や取引先との交渉が多い仕事など、マルチタスクが求められる仕事は不向きな傾向にあります。
起点を効かせて処理する必要のある仕事もパニックになる可能性が高いです。
パニックになってしまう主な原因としては、急な予定の変更へ不安に感じてしまうことが挙げられます。
計画された物事には丁寧に対応できるものの、予定では予期されていなかったタスクが発生してしまった場合、何をいつまでに終わらせれば良いのかという適切な優先順位をつけられずやるべきことを見失ってしまうことで焦りを感じ、パニックになってしまう傾向にあります。
結果として、複数の同時並行で進めなければならないタスクを一人で抱え込んでしまうと、様々なミスを犯してしまう危険性があります。
①接客業
ASDに向いていない職業の1つ目は、接客業です。
接客業は対人業務なため、相手の心を察する能力が必要とされます。
また、ASDの方が苦手とするイレギュラーが発生しやすいため、ストレスを強く感じる場面が多くなるでしょう。
②営業職
ASDに向いていない職業の2つ目は、営業職です。
営業職も接客業同様、対人業務である以上相手の心を察する能力が必要とされます。
また、電話対応や書類作成、来客対応などの事務作業も同時に行う必要があるため、マルチタスクが苦手な方にとっては負担になりやすい仕事です。
③総務職
ASDに向いていない職業の3つ目は、総務職です。
総務職は、会社運営を円滑に行い、社員が働きやすい環境整備を行う仕事です。
備品管理や施設管理のほか、福利厚生の整備や社内イベント企画、各種書類の作成・管理など、会社全体の幅広い業務に携わるため、マルチタスクになりやすいでしょう。
④お客様対応窓口
ASDに向いていない職業の4つ目は、お客様対応窓口です。
お客様対応窓口は、顧客からの商品や、サービスに関する相談や問い合わせに、メールや電話、チャットなどで答える仕事です。
製品を導入した顧客に対して、使い方の説明やトラブル発生時の対応などのアフターサービスを行うこともあります。
ASDの方が苦手とする電話応対や臨機応変な対応が必要となる職種ですので、難しいことも多いでしょう。
⑤秘書
ASDに向いていない職業の5つ目は、秘書です。
秘書の仕事は、主に企業のトップである社長や役員をはじめ、政治家や弁護士、医師などの庶務業務のサポートです。
具体的には、スケジュール管理や調整、来客対応、会議や商談、イベントなどの準備、社内外の人とのやりとり、書類作成など、マルチタスクや円滑なコミュニケーション能力を求められます。
ASDの就職・転職のコツ
本項目では、ASDの人が就職や転職をするためのコツを4つ紹介します。
ASDの方が自分に向いている仕事に出会うためには、自己理解を深めることが大切です。
自分の強みや苦手な部分を把握することで、自分に適した職場や作業内容の選択が可能になります。
また、各種制度も充実しているので、必要に応じて利用しましょう。
医療機関やサポート団体と繋がる
ASDの就職・転職のコツの1つ目は、医療機関やサポート機関と繋がることです。
サポート団体には、就労移行支援事務所などがあります。
就労移行支援事務所は障がいのある人たちの一般就労・一般就労後の職場定着を支援する団体です。
具体的には次のような支援が受けられます。
具体的な支援内容
- 仕事で活かせる知識・技能の習得
- 転職後の職場定着支援
- 仕事や私生活で活かせるメンタル面のサポート
- 向いている働き方や仕事についてのアドバイス
- 転職先候補の業務や雰囲気を体験できる職場体験実習の紹介
- 履歴書・経歴書・エントリーシートの作成支援
- 模擬面接の実施
- 面接の同行(同席)
転職後の職場定着支援とは、支援を受ける本人との相談を通じて就労面・生活面の課題を把握し、所属企業や付随する関係機関との連絡調整を行うことです。
就労面の課題を把握することにより、所属企業や付随する関係機関との間で生じた課題解決においても必要な支援を実施します。
具体的な例として、企業や自宅等への訪問、支援を受ける本人の事業所への来所要請があげられます。
生活リズムや体調の管理などに関する課題解決に向けて、必要な連絡調整や指導・助言等の支援が実施可能です。
特性理解や知識・スキルを獲得する
ASDの就職・転職のコツの2つ目は、特性や知識・スキルを獲得することです。
他のASDの方には難しい仕事でも、自分には向いている仕事はありますが、その逆も然りです。
「自分は何が苦手・得意か」「どんな業務ができそうか」を紙に書き出して、一度整理してみると良いでしょう。
専門家以外にも、家族や友人から意見をもらうことも効果的です。
自己理解の実施は、エントリーシートの作成や面接の場などでも役に立つため、自身の特性を再確認してみましょう。
自分に合う就職・転職先探しをする
ASDの就職・転職のコツの3つ目は、自分に合う就職・転職先探しをすることです。
自分に合った仕事を見つけたい方は、雇用枠を検討しましょう。
求人には、「一般枠」と「障害者枠」の2種類があります。
障害者枠とは、障害者を対象とする求人・雇用枠のことです。
障害者枠では、一般枠と比べて、業務内容や業務量への配慮を得ながら働けます。
障害者枠を利用する場合は障害者手帳が必要なため、事前に準備しておきましょう。
一方で、一般枠に比べて、給料や昇進などの待遇の選択肢が少ない可能性があります。
障害者枠か一般枠、どちらの雇用枠を選択するかは、自らが会社側にどの程度の配慮を希望するかが重要です。
自らの能力と就職を希望する会社の業務内容や職場環境を加味した上で選択する必要があります。
エントリーシートや面接の対策をする
ASDの就職・転職のコツの4つ目は、エントリーシートや面接の対策をすることです。
ASDの方ができる工夫の例には、以下の方法があります
ASDの人ができる工夫
- 曖昧な指示で混乱しないように、具体的な指示を得るための質問をする習慣を身につける
- 体調やストレスへの自覚の薄さを補うために、通常の休憩時間に追加してアラームで休憩時間を設ける
- 説明を受ける際には、口頭ではなく文字や絵図の利用を求める
自身でASDの特性をカバーする対策を身につけることも大切です。
面接で特性対策を聞かれることもあり、実際に働く場面や私生活でも役に立つでしょう。
ASDの方が仕事で起こしやすいトラブル
本項目では、ASDの方が仕事で起こしやすいトラブルに関して4つ紹介します。
ASDの方の特徴である強いこだわりや話の内容を理解しづらいという部分が原因となり、社内でトラブルに発展する場合も考えられます。
社内でのトラブルを避けるためにも、ASDの方は自身の特性を伝えた上で今後の社内における対策について相談してみましょう。
業務に対する指示が理解できない
ASDの方が仕事で起こしやすいトラブルの1つ目は、業務に対する指示が理解できないことです。
曖昧な指示にイライラしてしまったり、物事を承諾しても理解していないことが多いです。
矛盾や疑問を感じると、それ以上話が理解できずに止まってしまうこともあります。
ASDの方はひとつひとつの指示が明確で、順序立てた説明を受けることで、話が理解できずに止まってしまうことも少なくなるでしょう。
対人関係が理解できない
ASDの方が仕事で起こしやすいトラブルの2つ目は、対人関係における物事や微かな心の動き、暗黙の了解などが理解できないことです。
誰に対しても常に同じように接してしまうため、上司や取引先に対してもタメ口で話してしまうことがあります。
反対に、どんなに親しい友人でも極端に敬語を使って話すなど、他者との適切な距離感が掴めないのが特徴です。
注意されても直らずにかえってストレスになるのであれば、対人関係がストレスになっていることを周囲の人たちに伝えた上で、今後の周囲への対応について相談してみましょう。
マイルールを優先してしまう
ASDの方が仕事で起こしやすいトラブルの3つ目は、マイルールを優先してしまうことです。
こだわりの強さから、他人のアドバイスを受け入れられず、1人だけ違う行動をし続けたことが原因でトラブルになる場合もあります。
自身の特性を職場のスタッフに伝えた上で、強いこだわりを活かせる業務がないか相談してみましょう。
自分のミスを認めない
ASDの方が仕事で起こしやすいトラブルの4つ目は、自分のミスを認めないことです。
コミュニケーション能力に障害があるため、自分のミスを認められません。
そもそもミスを認識していない場合もあるため、謝らないこともあります。
ミスを指摘されていても自分のミスだと理解できずに、パニックを起こすこともあります。
そのため、自分がした行動の意図を伝え、伝えた意図のうち何がミスに当たるかをひとつずつ話し合い、ミスの基準を理解することが大切です。
身だしなみに無頓着
ASDの方が仕事で起こしやすいトラブルの5つ目は、身だしなみに無頓着なことです。
ASDの方は、自分の興味のある分野には熱中しますが、興味のないことには極端に無頓着です。
おしゃれや服装に興味がない場合は制服の着こなしなどでも何度も注意を受けたりします。
制服の着用が必須の職場ではそれ自体が苦痛となってしまい、無断欠勤の原因にもなりえるでしょう。
制服の着用が欠勤理由となっている場合は、職場側に伝え必要最低限のTPOを意識した服装で出勤できるよう許可をとるなどの対策も講じてみましょう。
会社のルールを理解できない
ASDの方が仕事で起こしやすいトラブルの6つ目は、会社のルールを理解できないことです。
「始業時間の5分前には出社する」などの、会社の暗黙のルールとされることを理解できないことがあります。
これに対する効果的な対処法としては、「CBT(認知行動療法)」や「ABA(応用行動分析学)」などが挙げられます。
CBT(認知行動療法)
- CBT(認知行動療法)とは、うつ病や不安障害などの治療を目的とした心理療法です。
ストレスを受けた際の「考え(認知)・感情・身体的反応(身体)・行動」に着目し、ストレスが原因で狭まった思考や行動を自身で改善します。 例として、前日に仕事でミスをして怒られたとしましょう。
- 明日また怒られるかもしれない(認知)
- 不安な気持ちになる(感情)
- 不安から体調不良になる(身体的反応)
- 会社を休んでしまう(行動)
という形で自身の行動を4つに分類し、
- 生活リズムを整える
- 達成感を感じる活動を増やす
など、考えや行動を意識的に変えていくことでストレスを軽減し精神的な安定化を目指します。
ABA(応用行動分析学)
- ABA(応用行動分析学)とは、人間の行動には法則があるという考えの元、うまくいく行動を増やすことによって問題行動を減少させるという手法のことです。
- 例えば「出社時にメンバーに挨拶をする」という会社においてした方が良い行動を増やすために、「挨拶をしたことに対して褒める」などの良い結果を提供します。
ただ、「褒められる」という行為が必ずしもその人にとって良いことであるとは限らないため、行動の結果として得られる良いこと(=強化子)は人によって変動させることをお勧めします。
ASDが就職・転職の際に利用できる支援制度
本項目では、ASDが就職・転職の際に利用できる支援制度について紹介します。
日本国内ではASDの方が就業に際して利用できる制度が整っています。
必要に応じて利用できる制度を活用するのも手段のひとつです。
精神障害者保健福祉手帳
ASDが就職・転職の際に利用できる支援制度の1つ目は、精神障害者保健福祉手帳です。
障害者手帳を取得することで、さまざまな支援制度を利用しやすくなったり、障害者雇用枠への応募が可能になります。
ASDをはじめとする発達障害者の方々は精神障害者保健福祉手帳が取得可能ですが、注意点としてASDであれば必ず手帳を交付してもらえるとは限りません。
日常生活、社会生活における困難度合いによって交付が決定されます。
自立支援医療
ASDが就職・転職の際に利用できる支援制度の2つ目は、自立支援医療です。
自立支援医療制度は、心身の障害の除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。
ASDで通院中の人は国の定める以下の項目に該当します。
- 精神通院医療:精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者
所得に応じて1ヶ月あたりの負担上限額が設定されていて、通常3割負担の医療費が1割負担または高額療養費の自己負担限度額まで軽減されます。
就労移行支援
ASDが就職・転職の際に利用できる支援制度の3つ目は、就労移行支援です。
就労移行支援とは、原則として最大利用期間は2年間で、就職に必要な知識やスキルを向上するための訓練や、求職活動に関する支援などを行います。
ASDの方は自己をよく理解して向いている仕事を見つけよう
いかがだったでしょうか。
ASDの就職や転職にはさまざまな方法や制度を利用することで、無理なく行えることがわかりました。
また、ASDの方が向いている仕事として、
ASDの人が向いている仕事
- 定型作業が中心で淡々と進めやすい仕事
- 専門性やこだわりを活かせる仕事
- 視覚処理能力を活かせる仕事
がありました。
すべてのASDの方に当てはまるわけではありませんが、就業の際の目安となるでしょう。
ASDの症状に該当しており、就職や転職に困っている方は是非本記事を参考にしてみてください。
公認心理師(国家資格)・社会福祉主事任用資格・訪問型ジョブコーチ
【監修者】山本悠紀
公認心理師(国家資格)・社会福祉主事任用資格・訪問型ジョブコーチ 専門性を活かして、障害福祉事業の領域で豊富な経験を持つ。